LEICA MP ORIGINAL考察

LEICA MP ORIGINAL BLACK PAINT

つい先日、ライカMPオリジナル・ブラックペイントを販売する機会に恵まれました。
*ここでいうMPとはライカがM型Professional用として1956年にリリースしたものを指します。
おおよそ20年前、ヴィンテージライカのビジネスを始めてから、このMPを取り扱うことが今に至るまで一番の喜びである事は間違いない事実でもあります。
そこで今回、謎多きMPについて少しだけ考察してみようと。

LEICA MP FRONT IMAGE

こちらがオリジナルのMPブラックペイント。正面から見るとM2のようですが、アイレットが福耳のためM3のようにも見えますね。ボディー下部に見慣れない厚い蓋が付いていますが、これがライカビットMP(Leicavit MP)なるものです。底面にトリガーが格納されており、それを引き出す事で巻き上げレバーを巻く事なくトリガーによって速写できるというシステムです。

Leicavit MP

ライカMPは全てこのライカビットMPとの組み合わせでライツ工場から出荷されています。まさにプロの為の道具というべき仕様。当時のMAGNUM PHOTOSのメンバーを中心に多数のプロカメラマンに愛用されました。このカメラがあったからこそ、報道写真の飛躍的な進化とスピード、そして歴史的瞬間がメディアを通して世界に伝えられたのは紛れもない事実です。

1956年10月にこのMPになる物が始めてライツ工場から11台出荷され、内ナンバー2・3番がブラック、その他がシルバーと言われています。
ナンバー2番は先日のライツフォトグラフィカオークションで日本円で1億で落札されましたね。ナンバー9番は僕が販売していますので、シルバーボディーの現物を確認してます。9番は幾つかのの変更点があって興味深いカメラでした。クリスティーズに30年近く前に出た個体で書籍などにも登場している為、割と有名な個体です。ナンバー4番も見たことがありますが、こちらも確かにシルバーでした。
15年くらい前にナンバー24番(ブラック)も僕の手許を通って行きました。

ブラックペイントにも特徴があって比較的早い番号(30番くらいまでかな)は、黒のラッカー塗装が薄くペイントにこんもりとした印象はないです。なので、トッププレートの刻印やライカビットの刻印は細くシャープに見えます。こんもりとしたM4のようなペイントだとフェイクですね。グッタペルカのシボの具合も微妙に異なります。ファインダーにも特徴がありフェイクとの見分け方の指標になります。

そして、フィルムの絵が書いてあるプレートを外すと番号が刻印されています。こちらでも確認取れます。もう一箇所シャーシナンバーが刻印されている場所が有りますが、ここではフェイク防止の為に伏せます。
外観の特徴やペイントの具合、外装パーツの整合性などを確認したのち、内部のシャーシのシステムやナンバーの確認で真贋を判断します。

そしてMPは殆どがズミクロン50mmとの組み合わせで提供されています。(ズミルックス50mmも有り)
ただし、このズミクロンのシリアルもMP用とされるシリアルの物が付いています。公表は避けます。

と、今回MPを簡単では有りますが考察してみました。
ライカMPブラックペイントもロレックスのポールニューマン同様に非常に希少で高額でのお取り引きになって来ました。と同時に世界中のコレクターを魅了して止まない点もまたロレックスデイトナとリンクするところでも有ります。
オーナーとして選ばれる喜び、そして次世代に託す喜びは一入です。
売買の際は、お声がけ頂けると嬉しいです。最後少しだけ商業的になりました。

本当にこの仕事をして来て良かったと感じた2019年の年末でした。

ENZO SHOP Kazunari Nakai 28th December 2019